CASIO製7.2インチTFT液晶[CASIO-72AP]応用の巻 (1 / 1)

 CASIO製7.2インチTFT液晶 72APを応用する・・・


■ 7インチ越えワイドTFT液晶が安価で・・・


2009年4月下旬、Aitendo's電子工房のページに追加されたアイテムの一つ。 CASIO製というブランドを考えると、真っ先に STN液晶を連想 する位有名だったりする訳で、映り具合の方も STN液晶特有の のっぺりした映り を考えてしまうのでありました・・・ (^^; 値段はものすごく安いと思うんだけど。

ちなみに、このユニットの信号コネクタは 1mmピッチのフレキが使われているが、Aitendo's電子工房の商品販売ページにも ピン配は記されており、実際の応用に関して 難易度は高くない と思われる。
結果を先に出してしまうと、問題なくRGBモニタとして応用可能 であり、同じサイズの CMW72NS46Pと 比較すると、さすが TFTという感じの すばらしい画質 だ。

ではでは、早速本題に入ることにしよう・・・
いくら難易度は高くないという話を聞いても、信号コネクタが ワンタッチで繋げない のと サンプルもない 状況を考えると、実際に使ってみたいと考える人の割合は下がってしまうかも知れない。
とりあえず、簡単に済ませられるレベルで、Aitendo製 RGBコンバータや、15KHz系のアナログRGB信号を出せる機器 (MultiR HDD、PlayStation2など) に接続する例を記しておきたいと思う。

発売早々に購入して試食した結果を元に、とりあえず上記のように ワンタッチで繋げない などと書いてみたのだが、最近の Aitendoさん とんでもなく素早い ようで、5月中旬、RGBコンバータV1.4に装着する専用変換コネクタと フィルムケーブルの販売を開始してしまいました (^^;
ま、ハンダ付けなしで配線完了するレベルになってしまった訳で、ユーザーの裾野が広がるのは良いことなのかも知れない。 値段が結構 するのがタマにキズではあるが・・・ (2009.05.24追記:笑)


▲ アナログRGB接続例 (1)[拡大写真]
▲ アナログRGB接続例 (2)[拡大写真]


まず最初に、実際の映り具合を見ていただくことにしよう。
上のイメージ 2枚はアナログRGB接続の例、入力ソースは MultiR HDDを使用してみた。
ちなみに MultiR HDDや PlayStation2などでは、同期信号 C-SYNCは 映像信号代用 となるため、 このユニットに接続するためには 追加回路が必要 になる。

次は、コンポジットビデオ入力の例。 Aitendo製RGBコンバータV1.2を使用して接続してみた。


▲ コンポジットビデオ接続例 (1)[拡大写真]
▲ コンポジットビデオ接続例 (2)[拡大写真]


Aitendo製RGBコンバータからは、同期信号 C-SYNCが ロジックレベルで出力されている ため、 このユニットに接続する場合でも そのまま直結 することができる。
アナログRGB接続と比較すると、さすがに細かい部分の画質に差が出てくるが、TVやDVDなど、自然画主体の入力ソースでは ほとんど気にならないはずだ。

・  ・  ・  ・

■ 改造や応用関連作業などなど・・・


素性の判らないユニットを応用する場合、事前に全ての回路を調べて回路図を起こしておくことが望ましいのだが、調査にかけることの できる時間は限られているので、あまり重要でない箇所があるのなら、極力省いて行く方が効率が良い。
とりあえず、今回は初期段階で RGBモニタとして応用できる ことが判明していたため、個人的に調べたかった場所を 少し調べただけで終わりにしておいた。 具体的には、同期関連回路やバックライトインバータ周辺を少し調べてみたのだが、
  • 同期信号 C-SYNCはロジックレベルで供給する必要がある。

  • バックライトインバータは、出力のフィードバック制御が行われていないので、電源は安定化が必要。
という状況がわかったので、まずはここまでということで。

さて、このユニットを実際に応用する場合、信号線の接続は フレキコネクタとフィルムケーブルを使う パターンと、内部の基板上に直接リード線をハンダ付けする パターンが考えられる。
フレキコネクタは RGBコンバータ V1.2などにも取り付けられているが、ピン数も端子配列も異なるので互換性はない。 まじめに合うパーツを揃えようとすると そこそこ部品代もかかるので あまり得策ではない ように思う。 但し、液晶ユニットそのものは 全くの無改造 で使えることは考慮してやらなければならないが。
一方、内部の基板上に直接リード線をハンダ付けすることを「問題なし」とするならば、追加費用という面では 限りなく安上がりでもある。 ということで、内部の基板から信号を引き出すパターンから最初に行ってみよう・・・


▲ ユニット内部を見る[拡大写真]
▲ パネルへのフレキコネクタ解放[拡大写真]


まず最初のステップは、ケース裏蓋の取り外し。
固定しているネジは、コネクタ横の 1本、それにバックライトへの高圧ケーブル引き込み口のすぐ下側にもう 1本。 この 2本を取り外してフタを横にスライドすればツメが解放される。

続いての作業は、パネル本体へのケーブル取り外し。
パネル本体へは フレキ1箇所のみ で接続されているので、作業中に 誤って切断しないよう まず最初に 解放してやる必要がある。 コネクタ後部の黒い部分を引き起こし、ロックを解除したら、ケーブルを抜いておこう。


▲ 回路基板を取り外す[拡大写真]
▲ 必要な配線を引き出す[拡大写真]


続いて、バックライトインバータへのケーブルと固定ネジを取り外し、突起や先ほど外したフィルムケーブルなどを避けつつ、回路基板を取り外してやる。

信号線の引き出しは、右上のようなイメージで・・・
基本的に、コネクタが通常の 端子の付いたタイプ なので、足の部分にリード線をハンダ付けしてやれば 無理なく信号線が引き出せる。 一応、ピン番号基準で簡単な説明を記しておくのでご参考まで。
  1. 12V電源 (赤色リード線・太)
  2. 12V電源 ( // )
  3. 12V電源
    12V電源の+側を接続する。 バックライトと映像回路用電源は内部で共通接続されている。
    1〜2Pin間にハンダを盛って短絡し、太めのリード線で電源端子まで配線するのがお勧め。

  4. GND (黒色リード線・太)
  5. GND ( // )
  6. GND (黒色リード線)
    電源の−側と、信号GNDが共通になっている。 バックライトインバーターの電源電流が流れるため、細い線を使うことは 避けたいところだ。 4〜5Pin間にハンダを盛って短絡し、太めのリード線で電源端子まで配線するのがお勧め。
    信号用GNDは、別途 6Pinからリード線を引き出し、RGBコンバータへと配線する。

  7. SYNC (黄色リード線)
    H/V混合された同期信号 (C-SYNC)を、ロジックレベルで供給する。
    コンポジット映像信号を供給すれば内部で同期分離してくれるユニットもあるが、このユニットでは純粋な同期信号のみを ロジックレベル (5Vpp)で供給しなければならない。 入力ソースによっては、同期分離回路の後付けが必要になるケースあり。
    ※RGBコンバータに接続する場合はそのままでOK。

  8. R (赤色リード線)
  9. G (緑色リード線)
  10. B (青色リード線)
    それぞれ、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色映像信号を供給する。 各信号ともユニット内部で 75Ω終端されており、0.7Vpp程度の一般的な信号レベルで RGB映像信号を出力できる機器 (Aitendo製 RGBコンバータなど)では、そのまま直結可能。

  11. HRV (紫色リード線)
  12. VRV (橙色リード線)
    それぞれ、0Vを加えると通常の方向で、HRVに 5Vを加えると水平方向が、VRVに 5Vを加えると垂直方向が反転した状態で 表示される。 反転表示が不要の場合、GNDと接続して 0Vに固定するか、面倒なら未接続にしておいても大丈夫だろう。

  13. 5V電源出力 (赤色リード線)
    ユニット内部で使用するために作られた 5V電源を取り出せるポイント。 電解コンデンサ C104の+端子か、すぐそばにあるテストポイント P104に接続してやろう。 Aitendo製 RGBコンバータからは 5Vや12Vの電源を得ることもできるが、モニタユニット単独で使う場合、5V電源が必要なら ここから取ると便利だ。
    このポイントからは 10mA程度の電流が問題なく取り出せることを確認済みだが、もし画像反転機能が不要な場合や、同期分離回路などの 電源を必要とする外付け回路を使用しない場合、引き出しはもちろん不要だ。
ちなみに、「13. 5V電源出力」 は“13”という番号を振っているが、該当するコネクタの端子は存在していない。 正規に フィルムケーブルで接続する場合には得ることができないのでご注意を。

次は、フィルムケーブルで接続するパターンの方も行ってみよう。


▲ 用意したフィルムケーブルたち[拡大写真]
▲ こんな感じで加工して使う[拡大写真]


フィルムケーブルを使って接続する場合は、こんな感じで加工して使う。
このユニットで使われているフレキコネクタは 12Pinなので、本来は同じピン数のケーブルとコネクタを使うのが 望ましい。 が、今回は 12Pinのものが手持ちになかったため、14Pinのものを加工して 12Pinに無理矢理合わせてみた。
ケーブルが 1mmピッチのため、コネクタをマウントする基板も 1mmピッチの変換基板をあてがうのが簡単だが、こちらも 手元になかったため、2mmピッチユニバーサル基板のランドを一部縦に割いてマウントしている。


■ 実際の接続パターンを考える・・・


● その1: 追加部品なしで RGBコンバータと組み合わせる

追加部品を使わず、Aitendo製 RGBコンバータと組み合わせてみた例だ。
ユニット内部から信号線を直接引き出す / フィルムケーブルで接続する場合のどちらでも、全く同じ接続方法で対応できる。
点線の抵抗 390Ωは、画面が左に寄る 現象を 軽減 したい場合に有効 (但し完全に解消できる訳ではない) だ。
ちなみに、RGBコンバータは手元にあった V1.2を使っているが、V1.4でも基板の外形やコネクタ CN2の形状が異なるのみで、 コネクタピン番号と信号の対応なども同一。 そのまま使うことが可能だ。


▲ 追加部品なしで RGBコンバータと組み合わせる場合の接続



● その2: 15KHz系アナログRGB+C-SYNCが出力できる機器と組み合わせる

アナログRGBが出力できる機器と組み合わせる場合のバリエーションは、いくつか存在する。
次の例は、同期信号を コンポジット映像信号から分離 しなければならない場合。
一昔前の 21Pin RGB端子がこういう規格で作られていた頃の名残だ。 一部の RGB出力付きDVDプレーヤー、MSX2やPlayStation2などがこのパターンに該当するほか、 MultiR HDDは、このパターンでも接続できる。 要は 同期分離回路 が必要になるので、 定番の同期分離 IC LM1881Nを追加して対応するのが良いだろう。
何れにしても、追加回路には電源も必要なので、液晶ユニットから引き出すか、三端子レギュレーターの追加も併せて検討する必要がある。

LM1881Nの入力端子に入れてあるコンデンサは、通常の環境では不要なのだが、万一ノイジーな信号を供給した場合など、 同期が乱れる現象が起こる場合は、カット&トライしてみて欲しい。


▲ 15KHz系アナログRGB+C-SYNCが出力できる機器と組み合わせる



● その3: 15KHz系アナログRGB+H/V-SYNCが出力できる機器と組み合わせる

最後の例は、PCのモニター端子と同様の VGAコネクタが取り付けられており、そこから 15KHz系 H/V同期信号がロジックレベルで別々に出てくる場合。
このパターンでも追加部品は必要だが、単に信号の Lレベルを混合するだけなので、比較的簡単に済ませることができる。
VGAコネクタから 15KHz系のアナログRGB信号が出せる機器は少ないが、MultiR HDDは、このパターンでも接続 OKだ。


▲ 15KHz系アナログRGB+H/V-SYNCが出力できる機器と組み合わせる



2009/05/10 Yutaka Kyotani (暫定公開)
2009/05/17 Yutaka Kyotani (追記)
2009/05/24 Yutaka Kyotani (追記・正式公開)

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