一本行っとく?! フレームバッファ入りSTN液晶! (2 / 3)

■ MSM518221の周辺回路と改造の実際・・・


MSM518221は、シリアルアクセスによってデータの書き込みや読み出しを行うメモリなので、256KWordの大きさがありながら、外部に直接 アドレスを指定するための信号線は存在しない。 パッケージから出ている信号線の数も驚くほど少なく、通常のメモリが載った基板を ごにょごにょする場合を想定すると、その対応はかなり楽に感じるはずだ。 また、書き込み側 (映像信号 → コントローラー → メモリ)と、 読み出し側 (メモリ → コントローラー → 液晶)が完全分離されており、今回は 書き込み側のみの改造 で済ませるつもりだ。 メモリに書かれたデータは、コントローラーが適切なタイミングでスキャン・・・ つまり、メモリにデータを書き込むだけで 勝手にその内容が表示される ことを期待している。
この計画通りきちんと動いてくれれば、わずか900円で CRTコントローラー相当品付き表示装置が入手できる という風にも取れますな (笑)

ここで、MSM518221×2および、コントローラー MB87A921A周辺回路で、書き込みアクセスに関連する部分を抜き出してみると、下記のような回路になっている。


▲ フレームメモリおよびコントローラー周辺回路


コントローラーからは、WEとRSTWが別々のタイミングでメモリに与えられ、SWCKとDIN0〜DIN7までは共通になっている。 つまり、タイミングをズラして 2つのメモリに分割書き込みされていることになる。 ここで、IE端子は Vccにプルアップ状態で固定されているため、書き込み時のアドレススキップは行われていないようだ。

これらのコントローラーからメモリへの制御を切り離し、メモリへ外部から任意のデータを書き込みためには、WE、RSTW、SWCKとDIN0〜7からコントローラーに 接続されているパターンをカットし、外部に引き出してやる必要がある。 また、今回は IE端子を使った任意範囲の書き込みにも対応するつもりなので、 IEからVccに接続されているパターンもカットし、同様に引き出しを行う必要がある。
これらを回路図中に書き加えてみると、こんな感じになる。


▲ コントローラーのカットと信号線引き出しを書き加えた回路


さて、実際の改造作業だが、液晶パネル内部の回路に対してパターンカットや信号線引き出しなどを行うには、まず最初に基板自体を取り外す必要がある。
ネジやコネクタの取り外しだけで対応できれば簡単なのだが、バックライトの蛍光管が直接基板に半田付けで固定されているため、 半田を除去する作業 が必要だ。
  • バックライト蛍光管の接合部パターン (PAD901〜904)のハンダを除去する。
  • パネル本体へのフレキシブルケーブル接続コネクタ (CN2、CN3)二箇所を解放する。
  • 基板を挟み込んでいるロック箇所を解放する。
こんな感じの手順で進めて行けば良いだろう。

基板が取り外せたら、まずはオモテ面4箇所(10本)のパターンをカットする。


▲ 基板オモテ面のパターンカット[拡大写真]
▲ パターンカット詳細位置[拡大写真]


左上のイメージは基板全体、そして右上にアングルを変えてカット箇所付近の拡大画像を掲載している。

それぞれ矢印を入れておいたので位置はつかみやすいとは思うが、一度に4本まとめてカット する場所と、1本のみカットの場所が 各 2箇所あるので、失敗しないよう慎重に作業しよう。


▲ 基板ウラ面のパターンカット[拡大写真]
▲ パターンカット詳細位置[拡大写真]


オモテ面のパターンがカットできたら、次はウラ面もパターンカットが 2箇所あるので片付けよう。

ウラ面は白色のコーティング加工がされており、極めてパターンの存在が確認しづらい ので、さらに慎重な作業が必要だ。
ちなみに、こちらも 3本まとめて、と 2本まとめて・・・ のカットを行うことになる (汗)
回路図の再確認 と、テスターを使った導通テスト を励行しよう。 それと、焦って 指を切らない ようにネ (^^;


▲ メモリへの信号線引き出し[拡大写真]
▲ 信号線引き出し別アングルから[拡大写真]


パターンカットができたら、次は信号線の引き出しだ。
メモリは 2チップ実装されているが、前述のように書き込み用データバスは両者共通配線なので、いくぶん配線は楽かも知れない。 D0〜D7の 8本、それに制御信号が チップ当たり 3本×2で 6本、書き込み用クロックが両者共通で 1本、GND×2本・・・ の合計 17本になる。

今回は手っ取り早くまとめるため、MILコネクタの圧着された 20Pinフラットケーブルをカットしてさっさと配線してしまったが、やはり 1.27mmピッチの ICに直接半田付けするのは あまり作業性がよろしくない ので、場合によっては「サブ基板」などにスズメッキ線を立て、 上から被せて位置決めされた状態で半田付けしてやるのが良いかも。 そのサブ基板からリード線を出せば、作業性の面で有利だろう。

全てのパターンカットと信号線引き出し、配線チェック等が完了したら、逆順でケースに取り付け、最後にバックライト用蛍光管の ハンダ付けをやり直して元に戻せば OK。 この状態で電源をつないでやれば ランダムパターン が表示されるはずだ。



2009/01/25 Yutaka Kyotani (暫定公開)
2009/02/01 Yutaka Kyotani (追記・正式公開)

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