HDビデオラインセレクタ「電源回路の作成」・・・ (Page 1 / 1)

 電源回路の作成


■ +5Vから -5Vを作る・・・


電源が電池なら、マイナス電源用にもう一組同じ本数の電池を用意する。 ACアダプタを使うなら、マイナス電源用にもう一台 同じACアダプタを用意する・・・ というカタチで、比較的簡単に電源自体は用意できる。 今回の製作でも、当初は +5V用と -5V用に合計二台のACアダプタを使うことにした経緯がある。
しかし、方法自体は簡単なのだが、二台のACアダプタを使うことは使い勝手がたいへん悪くなる。 コンセントも差し込み口を 確保しなくてはならないし、場所も食う。 これから購入するのであれば、経費もそれなりにかかる。 ということで、 一通りの回路ができあがったら、電源回路もきちんとしたものにしてやるべきだ。

電源回路を作る場合、その用途によって最適な回路構成は変わってくる。 -5Vの消費電流が十数mA程度までなら、 チャージポンプIC一発で +5Vから -5Vを作ることができる。 外付け部品も少なく、面倒なコイルを使う必要がなくなるため、 取り扱いという面では楽チンである。
今回は、高速OP-AMPを使う関係で、余裕を見て 100mA程度の電流を取り出せる回路にしたいので、やはりコイルを使う従来型 コンバーターにならざるを得ない。 もしコイルを自分で巻いても良いということにすれば、安定化されていない電源から ±2電源を作るという選択もアリだが、そこまで時間をかけたくないので、+5VはそのままACアダプタから供給、-5Vは +5Vから変換して生成・・・ という回路を、適当な電源用ICを使ってでっち上げることにする。

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■ -5V生成回路について・・・


とりあえず、簡単にできるレベルということで、大阪日本橋の店頭で購入できるICから、NJM2360ADを選択してみた。 これは JRC(新日本無線)のICだが、オリジナルのMC34063A (ON Semiconductor)より安かったという単純な理由だ。 ちなみに、デジットで 130円ナリ(2007/11)。
回路としては、NJM2360ADを使って反転型コンバーターを構成している。 スイッチング素子は、ICに内蔵されている 1.5Aのパワートランジスタで済ませるようにしたので、他のキーパーツとしては、コイルとダイオードが必要だ。

▲ -5V生成回路


ダイオードは、ショットキーの定番 1GWJ42(東芝)を使用。 スイッチング用コイルとしては、シリコンハウス共立の 店頭で売られていた TC-221M-1A-5026という品番で、220uH 1Aのトロイダルタイプのものを使用している。 コイルは フィルタ用にもう1種類使っているが、こちらは通常のインダクタで太陽誘電の LAL04シリーズだ。 なるべく直流抵抗分の 少ないもの(1Ω以内必須)を使用するようにしよう。
あと、平滑用コンデンサもできるだけ低ESRのものを使って欲しい。 回路図中 **印 が付いている 470uF×2個だが、出力へのリップル分の漏れが違ってくる。

▲ 電源回路のキーパーツたち[拡大写真]

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■ さて、試作結果は・・・


上記の回路をまずはカタチにしてみた。
ICと外付け部品数点を並べてみたところでは、イメージとしてそんなに場所は取らない筈だったのだが、±両方向の出力に LCフィルタを付けたのと、電源SWやコネクタなどでそこそこ基板のスペースは必要だ。

▲ -5V生成回路試作基板[拡大 オモテウラ]


+5Vから -5Vを生成する上で避けて通れないのが、両者のタイムラグ だ。 電源を 入れた時、切った時の何れでもタイムラグが発生する。
今回の製作では全くに問題にならないレベル だが、厳密に電源投入シーケンスが規定されている部品を 使う用途へ転用する場合は、もう少し見直す必要があるかも知れない。 一応、データを記しておこう。

▲ P-ON (10ms/div)[拡大波形]
▲ P-OFF (40ms/div)[拡大波形]


さて、とりあえず 簡単に製作できるレベル ということで、無事に単一電源で動作するよう まとめることができた。 しばらく使ってみた限りでは全く問題も発生せず、スイッチングノイズの影響も特にないようだ。

あと、先ほども少し触れたのだが、この回路を別の用途に転用しようと考える方がいるかも知れないので、念のために 改良の余地 について記しておきたい。
ひと言で表すなら、効率があまり良くない のだ。 出力100mA を目標にするならOKだが、出力500mA が目標ならNGだろう。 実際の値を書くと、食わず嫌いの 何ちゃって評論家 の方々に叩かれそうなので (^^; 書くのは止めておくことにする。
ちなみに、自分ではもう何が原因か判っていて、一つはIC内部のスイッチング素子が NPN-TRのダーリントン接続であることによる損失、 もう一つはコイルの特性(誘導ノイズをバラ撒きたくないのでトロイダルにした&コアの特性は不明) である。 なにぶん、今回の用途ではこれ以上複雑な回路にしたくないので・・・。

2007/12/16 Yutaka Kyotani

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