液晶モニタシステム 回路構成について (Page 2 / 2)

◇続いてはビデオアンプと A/D変換部・・・

今回は、前述の通り二系統の入力を切り替えられるような構成としたため、ビデオアンプには 切替回路の機能をもったビデオスイッチIC を選定することとした。 但し、ビデオスイッチにも色々なバリエーションがあり、各入力に対してのクランプ回路の有無、その他 6dBアンプや 75Ωドライバ機能など、中には使いづらいものもあるので、事前に内部構成を把握しておく必要がある。
今回は新日本無線(JRC)の NJM2246Dを選択した。 三系統入力切替+各入力ともクランプ回路あり、6dBアンプ付き、75Ωドライバなし(エミッタフォロア+5mA定電流シンク)という内容だ。  このうちの一系統を OSDに使用し、残りの二系統を信号入力に割り当てている。
これは余談だが、OSDに使用する入力には クランプ回路は不要 である。 但し、クランプ回路が組み込まれていると 黒レベルの設定が楽 に行えるという利点がある。 あと、複数入力間で信号を切り替えた場合 (OSDを重ねた場合も含めて)の直流レベル変動を考えると、信号入力系統にはクランプ回路が組み込まれている方が有利だ。

続いては A/Dコンバータ。 以前スキャンコンバータに使ったのと同じ 8Bit 20Mspsの NEC製μPC659AGSを使用した。
この A/Dコンバータの基準電圧は IC内部で生成されており、本来外付けする必要はないのだが、画像調整を行うため、外部接続したトランジスタで生成している。 このうち高電圧側 VRTを可変することで調整を反映している。 低電圧側 VRBは内蔵クランプ回路の基準としても使われるので、VRTの変化に引きずられないように電圧を固定して踏んばらせている。
尚、PICマイコンからの調整信号は前述の通り PWMで加えられるため、CRによるLPFを通して十分に平均化してから VRT調整用として使用する。

信号系統の最後はデータラッチ。 R0〜5、G0〜5、B0〜5のほか、ENAB、H-SYNC、V-SYNCをドットクロックのタイミングでラッチしており、ロジックレベルが A/D変換側 5V、液晶側 3.3Vと異なっているため、その差を吸収するためのレベルシフト機能も兼ねている。 そのため、74VHCシリーズの ICを電源電圧 3.3Vで使用している。
この方法はロジックレベルを 5V系→3.3V系に変換する際の常套手段で、74VHCシリーズでは入力部分の保護回路が見直されて 電源電圧以上の入力が可能になっていることを利用している。 当然のことであるが、74HCや 74ACシリーズの ICでこの方法を使ってはならない。


◇電源回路と補足事項・・・

今回は、液晶のバックライト用として 12V、それにロジック回路用として 5Vと3.3V、合計三種類の電源が必要だ。 この中で最も消費電流が大きいのが バックライトで約 650mA、あとは 5Vと3.3Vを合わせて 350mA強というところだ。 3.3Vは5Vから三端子レギュレータで作ることは確定として、5Vと12Vを 分割するかどうかは考えどころである。
結局のところ、電源を一系統にしておくことの利便性を考え、今回 5Vは12Vから作ることにした。 マルチ出力電源の適当なものをお持ちの方は 別途考えてみていただきたい。

ひとくちに 5Vを12Vから作ると言っても、一般的な三端子レギュレータ 7805では損失が大きすぎてイマイチである。 そこで今回は、スイッチング三端子(?)レギュレータ に登場してもらうことにした。 このテのレギュレータは何社か作っているようだが、何れもコイルと放熱器が一体になったユニットタイプで、出力電圧の調整など細かい点を気にしなければ 通常の三端子レギュレータと同感覚で使用可能という便利な部品だ。
たまたま今回は CRBOX製 SG-051Aが安価に入手できた関係で使用したのだが、一つだけ注意点がある。 本来出力は 5V 1Aとなっているが、この 1Aという出力電流は 入力電圧が 20V以上ないと保証されないらしい。 ちなみに入力 12Vでは、0.5A以上流すと出力電圧が低下し始めてしまう。 別メーカーの同様な製品で YDS-105というのがあるが、こちらは入力電圧 10V程度からフルパワーが保証されるようだ。

最後に補足事項を少々・・・
PLLに使用している 74HC4046だが、例によってメーカー毎に特性が異なる困りモノでもある。 具体的にはタイミング用コンデンサの容量を変更してやらないといけない場合がある。  回路図中にメーカー毎の最適と思われる値を書き込んでおくので、入手した現物によって変更して欲しい。

74VHC14は、液晶にドットクロックを供給する関係で 3.3V動作させているが、出力振幅も 3.3Vしか取れないことに注意しよう。 何の配慮もなく 5V動作の C-MOS ICに 入力してしまうと閾値からの余裕がなくなってしまう。 ちなみに今回は A/Dコンバータ μPC659AGSに供給している信号があるが、μPC659AGSは入力レベルが TTL互換となっているため、そのままつないでも大丈夫だ。



実際に基板上に組み立ててみるとこんな感じになる。
今回は液晶に付属してきたフィルムケーブルを転用することを考えたため、引き回しスペースに場所を喰われて 後半少々苦しい展開になりつつある (^^;
液晶背面にはまだ少しスペースが余っているので、一回り大きな基板を装着することも可能と思われる。 状況によっては 部品の配置を含めてもう少し考えてみた方が良いかも知れない。

■ 資料はこちら
基板拡大イメージ  裏面  回路図
2003/05/04 Yutaka Kyotani (暫定公開)

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