液晶自作キット+TOSHIBA LTM08C351 (Page 1 / 3) |
液晶自作キット+TOSHIBA LTM08C351
■ LTM08C351という液晶パネル・・・
小型のモニタというのは時として便利な物である。 8.4インチという大きさとSVGAという解像度はとてもバランスが良く、
ちょっとしたセカンドモニタや、サーバコンソールの監視用としてもぴったりだ。 レトロパソコンのケースを
レストアして利用しようとお考えの方にもぴったりの一品ではないかと思う。
ということで、今回のお題は東芝謹製 LTM08C351(2003/11中旬 ○品.COMにて購入 \4,990 →
※12月初旬完売)。
液晶自作キットの種類は、A-115KP(A-100K+富士通製11.5インチSVGA液晶+ACアダプタのセット)を使用している。
この液晶、データシートも某○品.COMの商品ページからリンクされていたためすんなりGet。 信号インターフェースは
Digital RGB 各6Bit(26万色)ということで特に問題はなさそうである。
他のNECなどの液晶との違いをサラッと拾ってみると、
- 電源電圧は 3.3V単一電源。
NECの液晶は 3.3/5V何れの電源でも使用できるものが多いようである。
幸いにも A-100Kでは電圧切り替えジャンパーで 3.3/5V何れにでも切り替え可能になっており、
JP501を 3.3V側に設定しておくだけでOKだ。
※今回セット品の FUJITSU NA19017-C001も 3.3V仕様だったようで、JP501は最初から3.3V側にささっていた。
- 同期信号は H-SYNC、V-SYNCで与えるのではなく、ENAB(データイネーブル)という混合同期信号で供給。
NECの液晶では DEモード、固定モードという二種類のモードがあるが、何れにしても H-SYNCとV-SYNCの供給が必要である。
A-100Kには H-SYNC(PHS)、V-SYNC(PVS)、ENAB(PENAB)という三種類の信号が出力されているので、
PENABのみを LTM08C351に供給すれば良いだろう。
- 入力信号は各色8Bitではなく 6Bitとなっている。
実は最近まで、41Pin Digital RGBのパネルは各色 8Bitのものが多数派だろうと思っていたのだが、いざ調べてみると各色
6Bitのものが殆どのようだ (^^;
A-100Kでは各色 8Bitで出力されているが、MSB(上位)側から 6Bit分を LTM08C351に供給すればそれで OKだ。
※キットに付属品のケーブルも、各色6Bit分しか配線されていなかった。
- バックライトの蛍光管は一灯ではなく二灯実装されている。
キット付属のインバータは一灯用なので、実はこの問題がいちばん根が深いかも知れない。
簡単に済ませるなら、二灯のうち一灯だけをインバータに接続するか、二灯まとめて並列にして接続するかということになるが、
蛍光管は一般に負性抵抗分を持っているため、そのまま並列接続しただけでは二本の蛍光管がきちんとバランス良く点灯しない可能性が高い。
どちらにしても、これは実験して確かめるしかなさそうだ。
・ ・ ・ ・
■ 早速接続してみよう・・・
それでは早速接続してみよう。
A-100Kのボード上では、CN501という 2mmピッチ36Pinのコネクタが Digital RGB液晶を接続するためのコネクタだ。
手っ取り早く試したい場合、キットに付属のケーブルを途中で切って接続してもOKだが、私は付属ケーブルを手元に残しておきたかったので、
新たに 2.5インチIDE HD用 44Pin圧着タイプ(2mmピッチ)のフラットケーブルを用意した。
LTM08C351側のコネクタだが、データシートを見ると、ハウジングがDF19G-30S-1C、端子部分がDF19-2830SCFAと、
一応型番が書いてある。 しかしこれが一般にはなかなか出回らないクセモノのようで、実際に見積もりを取られた方からの情報によると、残念ながらある程度大量に注文しないと入手できないらしい。 特にピンは一万個単位と言われたとか (^^;
もし仮に入手できたとしても、バラ線の圧着には専用工具も必要だろうし・・・ まじめに対応しようとするとかなりハードルが高くなりそうだ。
ということで、今回は LTM08C351側は直にハンダ付けで行こう。
用意した 2.5インチIDE HD用ケーブルは 44Pinのものだが、私の所に来た A-100Kは 目的のCN501の左側
CN500の位置にピンが実装されておらず 44Pinのコネクタをずらしてそのまま差し込むことができる。 が、中には CN500にピンが実装されている
基板もあるようで、その基板では CN500のピンが支障するためそのままでは差し込むことができない。
そこで今回は、44Pinのうち 36Pin分だけ残して残りを金鋸でバッサリ切り落としてやった。 その後、切り口とサイド
(ケーブルの出ていない側)にエポキシ樹脂を塗り固めている。 ま、手荒に扱わない限り、これでOKでしょ。
このケーブルを20cm程度にカットし、皮を剥いて予備ハンダを行った上で慎重に LTM08C351の信号コネクタ根本にハンダ付けだ。
接続図はこちら・・・ なのだが、図を見る前に注意点をひとつ。
基板にはピン番号がシルク印刷してあるが、どうも番号の振り方のルールが違うようで、圧着タイプのコネクタを差し込むとそのコネクタから出るケーブルは
偶数側と奇数側が逆転する ので注意が必要だ。 手元にコネクタがある方は、実際に
コネクタをピンにあてがって確認してみるのがわかりやすいだろう。
今回はあくまで圧着済みのフラットケーブルに対して配線を行うので、ピン番号や信号の名称はフラットケーブルを基準にして書いてある。
ここまで確認できたら、次の図を見て欲しい。
あとはひたすら配線あるのみ (^^;
1mmピッチのコネクタは、結構端子間隔が広いように見えて狭いので、少し気合いを入れて臨むことをお勧めする。
ということで、配線の終わった液晶パネル裏面と動作テストの様子。
バックライトの問題はまだ検証していないので、暫定処置として二灯のうち一灯だけを付属品のインバータに接続している。 実はこれでも
十分すぎるほど明るかったりして (^^/v
・ ・ ・ ・
■ バックライトについて検討・・・
先ほども触れたように、このLTM08C351にはバックライトとして二本の蛍光管が実装されている。
暫定処置として片方の蛍光管のみをキット付属のインバータにつないでいるが、この状態でどれ位の電流が流れているかを
まず調べておくことにする。 調査方法としては、蛍光管の低圧側配線を外して 1KΩの抵抗を入れ、オシロスコープで
抵抗両端の波形を調べるという方法を使っている。 詳しくは
こちらのページ
も参考にして欲しい。
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◇蛍光管1灯接続時の波形◇ H=5μS、V=5V/div (54KHz / 19Vpp) |
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元々が10インチ以上の液晶用に作られたインバータのためか、少々電流は多めのようだ。 1KΩ両端に19Vppで19mApp。 波形が歪んでいるので
少し誤差はあるが、正弦波と仮定すると ÷2√2で約6.7mArmsとなる。
次に確かめないといけない内容としては、二本の蛍光管を並列接続するときちんと点灯するか
という項目だ。 実は何となく予想はついているのだが、蛍光管は負性抵抗を持つ素子なので、並列接続すると
先に点灯したモノ勝ち になってしまいそうな予感 (^^;
確認手段として、LEDとスイッチングダイオードを逆向き並列にしたものを二組用意。 これを蛍光管の高圧側に直列接続して
点灯させてみることにした。 バランス良く二本の蛍光管が点灯している場合、LEDもバランス良く両方とも点灯する筈だ。
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◇蛍光管を2本並列接続◇ ※高圧側にLEDを挿入して確認。 |
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◇LEDの点灯状況拡大◇ ※片側はうっすらとしか点灯せず。 |
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結果はごらんの通り・・・・
こりゃダメでしょ (^^;
通常インバータには、高圧側出力端子に定電流特性を持たせるためのコンデンサが入れてあるが、回避方法として最も有力なのは
そのコンデンサの直前から コンデンサごと分岐させる ことである。
一応やってみたのだが、何故か点滅を伴う不安定状態に陥ることがあり、どのみち高圧コンデンサの入手で悩まなければならないと
いう事情もあるので深追いはやめておいた。
このインバータ、負荷に流れる電流を検出して、その検出値が一定になるよう制御するフィードバックがかけられており、
どうやらその系が制御不能になってしまうようだ。
ということで、液晶自作キット付属のインバータは一旦諦め、別のもので検討してみることにする。
ちなみに、LTM08C351には専用のインバータも用意されているようで、VNL08C351-INVという型番らしい。 LTM08C351を組み込んだ
応用製品を発売しているメーカーの中には、オプション部品として売ってくれるところもあると聞いている(実際に探して買った人もいるらしい)。
また、TDKなどからも対応するインバータが発売されているようだが、入手性や値段を考えると、実際に購入までこぎ着けることは
色々な意味で難しそうである (^^;
最終的に検討してみたインバータはこちら・・・
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◇NEC製インバータ (採用) ◇ ※FIP12-05C-U3のシルク印刷 |
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◇TDK製インバータ (不採用) ◇ ※CXA-L101 |
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この二機種は何れも手元にあったもので、タネあかしをすると、別の企画で使うため NL6448BC20-08というパネルで使えるものをと探したものだ。
(※注:液晶自作キットで使うための比較ではない・・・ A-100KはSVGA、NL6448BC20-08はVGA解像度なので、そのままでは動作しない)
今回のLTM08C351は、大きさがNL6448BC20-08より一回り大きいため、インバータの特性も動作時の電流はもちろん
開放出力電圧 等の項目も気にしておいたほうが良い。 上記二機種のインバータについては
こちら でも少し解説させていただいたが、
今回は
手元にまだ何個かモノがあり、新規購入も可能 という理由と、TDKは某所で見付けたデータシートで
開放出力電圧が 900V弱 しかなく、やや低いと感じたので NECの方を採用した。 最もNECのインバータの特性は把握しているのかと聞かれると
つらいものがあるのだが (^^;
詳細は省略させていただくが、LTM08C351に実装されている蛍光管に接続した際の負荷電流が5mArms強と適当で、
冷蔵庫で冷却してもちゃんと起動できた ので、とりあえずはこれでよしとしておこう。
尚、2004年1月初旬にデジットを覗いてみたが、このNECのインバータはまだ店頭にきちんと並べられていた (^^)
さらに、
1/24 4枚ほど追加購入 (他の部品も一緒に買っているので、合計金額は一致しない)。
ということで、回路図はこちら。
ちなみにインバータ基板は二枚必要だ。 実装上の注意点等も回路図中に記しているので、このページの最後にある拡大イメージも
参照の上ご確認いただきたい。
追加した回路は電源の制御を行うためのもので、A-100Kがスタンバイ状態のときバックライトを消灯させるために必要だ。
制御回路はトランジスタ3石で構成されており、最終段の2SA715により 12V電源の+側を ON/OFF制御する。 電源電流が 1A以上流れても大丈夫なように、
ベース電流も30mA強流して飽和状態を保てるよう配慮している。 本来はその前段の 2SC1815でロジックレベルに整合させて
終わりにするつもりだったのだが、A-100Kから出力される BKLT_ON_OFF信号のドライブ能力が予想以上にへなちょこで、
きちんとドライブできなかったため、もう一石2SA1015のエミフォロを入れて根性を付けている。 P-Chの
Power MOS FETを使えばもう少し楽ができそうなのだが (^^;
尚、2SA715はかなり古いTrだが、もし入手できない場合は IC=3A程度流せる中型の PNP Power Trで代用しても
OKだ。 飽和状態を保てる状態なら放熱器ももちろん不要だ。
・ ・ ・ ・
■ 回路的にはこれで何とか・・・
なったのではないかと思う。
まだ色々と手を入れたいところはあるが、まずは一段落かな (^^)
とりあえず、シャーシー代わりのアルミ板に、液晶と基板、コネクタ等をセットしてみたのが右側のイメージだ。
少し補足しておくと・・・
- インバータとメイン基板の間にはシールド板。
- 付属品のコネクタ類(特にPC用VGAコネクタ)は使い辛いので総替え!
- 操作スイッチとケースはどうするか現在思案中。
詳細については
拡大画面 を用意しているので、必要に応じてご確認いただければ幸いだ。
2003/11/26 Yutaka Kyotani (暫定公開)
2004/01/15 Yutaka Kyotani (バックライトインバータ説明追記〜暫定公開2)
2004/02/01 Yutaka Kyotani (追記・バックライト輝度調整ページ追加)
2004/02/22 Yutaka Kyotani (追記・ケースの作成と仕上げページ追加・正式公開)
2004/05/03 Yutaka Kyotani (追記)
※資料調査協力 よっすぃー さん。