パチンコ台中古モニタ活用術「CR熱血冒険王」編


■CR熱血冒険王(西陣)
液晶パネル東芝製 5'TFT TFD50W-32B2
主要処理 ICTA1204AF
入力信号コマンド入力(Logic), 電源(12V)
本体改造パターンカット, スルーホール抜き, 信号引き出し
追加回路LM1881N, 74HC221 ほか
お勧め度★★☆☆☆
購入店・時期等おが さんご提供
他の同系機種 
備考基板はインテリジェント構成の一枚物。 改造で映像/同期信号入力可能となるが、H/V別々に同期供給する必要あり。
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実験をされる前に 注意書き をお読み下さい。

■このモニタユニットについて・・・

▼ 裏蓋を外した状態を後面から
▲ 液晶パネルとインバータ
東芝製 5インチ TFT液晶パネルを使用したモニタユニットである。
かなり大きめの樹脂製ケースで、しかも内側は鉄製のフレームという重厚な作りとなっている。 裏面には一部フレームの固定を兼ねた基板固定用のネジが 6ヶ所あるが、ケース自体のフタは上下のツメで固定されているため、 ツメのそばにあるネジ 1ツを外すだけで取り外すことができる。
尚、今回の題材は、おが さんという方からのご提供品でございます。 この場を借りてお礼申し上げます m(_O_)m

さて、ケースを開けて中身を取り出すと、裏側は右上の写真のようなイメージになる。
金属製のフレームの表側に液晶パネルが装着され、裏面に一枚物の制御基板が取り付けられた状態となっている。  基板の向かって左側は電源系の回路、右上側は映像処理系の回路が組み込まれており、映像信号処理用として東芝の TA1204AFが使われている。
中央部分から右側は絵柄処理のための回路で、CPUは川崎製鉄の KL5C80A12CFPが使われている。  画像コントローラーは何故か SANYO製 LM50B30、D/Aコンバータは外付けで μPC666GS。 その他に制御プログラム格納用 として ROMが 27C1000、RAMが LC35256DM、絵柄格納用 ROM LC378000RPが二発、ワーク用 RAMとして TC558128BJが二発搭載されている。

鉄製のフレームは比較的厚みがあるが、裏側の基板を外すと中はスカスカだったりする。 フレームに二ヶ所ほど 厚みを付けるためプレスで打ち抜いた部分があり、そこにバックライト用のインバータが取り付けられている。
ちなみに、液晶パネルとバックライトインバータを取り出したものが右下の写真だ。 インバータの基板は何故か表面実装の片面タイプで、 材質はベークライトだったりして (^^;


■回路について・・・

一枚物の基板では、全ての回路が同一の基板上に作り込まれた状態となっている。 今回基板を取り外して驚いたのだが、 何故か基板の表面も裏面もベタパターンが大半を占めており、配線はほとんど顔を出していなかったりする。 一体 何層基板なんだろう? 果たして配線はちゃんと追いかけられるんだろうか (^^;;

ということで、映像関係の回路を調べて抜き出したのが下の図だ。


今回は映像回路用として、東芝の TA1204AFという ICが使用されている。 この ICは 映像増幅、調整、ガンマ処理、液晶パネルインターフェースなどを受け持っており、 D/AコンバータμPC666GSから RGB映像信号が供給されている。  同期関係の回路は実装されておらず、画像コントローラーから出力されるロジックレベルの H-SYNCと V-SYNCが、 直接液晶パネルに供給されるほか、反転された H-SYNCがブランキング用として TA1204AFに供給されている。
電源関係の回路は、外部から供給される 12Vを元に、5V、23V、13V、-5Vと 4系統の電圧がインバーターで生成されており、 液晶には全ての電圧が供給されるほか、13Vと 5Vが映像回路に供給されている。 また、5Vはロジック回路にも供給される関係で 容量が大きめになっているようだ。


■改造と信号の引き出しポイント・・・

さて、今回の追加回路と信号の引き出しポイントは、実はもう回路図中に書き加えてあるのだが、基板のイメージを見ながら 実際に解説して行くことにする。

まずは映像関係の信号だが、D/Aコンバータ μPC666GSから、映像処理IC TA1204AFへ至るパターンをカットし、 RGB映像信号と GNDを引き出す。 続いて、画像コントローラー LM50B30から液晶パネルへ至るパターンをカットして H/V同期信号を、そして TA1204AFへ至るパターンをカットして CLAMP信号を引き出せば、信号関係はとりあえず OKだ。
最後に電源供給だが、基板表面の左下に見える 赤いコネクタ が電源用として使われており、 特に図示していないが 3Pinの両側が GND、中央が 12Vとなっている。 一般的な 2.54mmピッチのものなので、 適当に合いそうなものを見付けるか、直に配線を引き出す等して欲しい。






 






それでは、基板表側から各ポイント毎に説明してみたいと思う。 まずは左下側の「拡大図1」をご覧いただきたい。
この部分は映像処理関連の回路が実装されており、最初のステップとして、入力部分のパターンカットと信号引き出しを行うことにする。

1.チップセラミックコンデンサ C20、C21、C26の向かって右側のパターンを3ヶ所カットする。
2.C20の右側の端子に直接赤用の配線をハンダ付けする。
  同様に C21に緑用、C26に青用の配線をハンダ付け。
3.C36の右側の端子に直接 GND用の配線をハンダ付けする。
4.TA1204AFの Pin3と4 (つながっている)に CLAMP用の配線をハンダ付けする。
  ※この状態ではまだ LM50B30との間はカットされていない。






 






続いて右上側のイメージ「拡大図2」をご覧いただこう。
ここは、画像コントローラーと D/Aコンバータが実装されている一角で、同期信号のカットを行う。 尚 LM50B30の Pin191〜193は当然並んでいる訳であるが、Pin192だけは表面にいっさいパターンが出ていない関係で 別の方法で処理しなくてはならない (^^;;

5.LM50B30の Pin191から斜め左上に伸びているパターンを、少し太くなっている部分でカットする。
6.同様に Pin193からのパターンもカットする。

続いて下側の「拡大図3」。 上記でカットした同期信号の注入ポイントに配線をハンダ付けする。

7.液晶コネクタの Pin1に直接 H-SYNC用の配線をハンダ付けする。
8.同様に Pin2に V-SYNC用の配線をハンダ付けする。
9.同様に Pin8〜9(つながっている)に VCC(同期分離回路用)をハンダ付けする。








最後に、隠れていてパターンカットできない配線を切断するため、最大の難関「スルーホール抜き」を 行うことにする。 まずは、0.8φ〜1.0φの刃が付いたドリルと、テスターを用意しよう。

念のため、先ほどの手順で TA1204AFの 3〜4Pinに接続した配線と、LM50B30の 192Pin間に導通があることを確認し、続いて TA1204AFの真裏にある「このスルーホールを抜く」ポイントも導通確認して欲しい。
ドリルをスルーホールにあてがい、力加減を見ながら慎重にスルーホールを削り取っていこう。 やがて穴は貫通し TA1204AFのパッケージに当たるはずなので、ICにダメージを与えないよう速やかにストップ。 先ほど行った 導通確認を再度行い、今度は導通がなくなっていることが確認できれば OKだ。 どうもお疲れさまでした。


■追加回路について・・・

この液晶パネルおよび、映像信号処理ICが要求する信号として、RGB映像信号以外に同期信号をロジックレベルで 水平垂直別々に、そして映像信号のクランプ用として反転された水平同期信号が必要になる。
当初、別の機種用に用意した NJM2257Dによる AFC付き同期分離回路を使って実験と調査を行ったが、今回 同期信号関連では H-SYNCは垂直同期が分離される前の C-SYNC(複合同期)でもよく、また無信号時に 同期信号が途切れても走査が停止したりすることはないということが判明した。

ということで、同期分離IC LM1881Nを使って複合映像信号からロジックレベルの C-SYNCとV-SYNCを分離し、ワンショットマルチ 74HC221を使って垂直同期付近の等価パルスを殺した後パルス幅調整を行って H-SYNCとする構成を考えてみた。  74HC221には反転出力も存在するので、クランプ用の反転された H-SYNCも同時に生成できるため好都合だ。
先ほど H-SYNCは C-SYNCでも問題ないと書いたが、クランプ用の反転された H-SYNCを作るためには何らかの 「反転回路」が必要なため、トランジスタで反転するか、74HC14等のロジックICを使わなければならない。  74HC221を使えば CRを追加するだけで等価パルスを殺すことができ、ワンパッケージで当初の目的が達成できるということで 今回はこちらを採用することにした。








 






■さて、映り具合の方は・・・

まずは右側のイメージをどうぞ。 細かい文字もそこそこくっきり表示されており、5インチタイプの 標準的な映り具合ではないかと思う。
今回は、ユニットの構成が主要回路を一枚の基板に全て詰め込まれたタイプのため、改造が少しやっかいな 部類に入る。 外付け回路は、とりあえず苦労せずに組めるほぼ上限だろうか。

尚、PLAYSTATION接続時、同期信号ラインを 75Ωで終端してみたが、特に同期の乱れ等は見られなかった。
あと、秋月電子製 RGBコンバータV2と組み合わせることをお考えの方は、同期信号は RGBコンバータに入力する 映像信号で代用できるので、同期タイミングのズレを防ぐため、是非映像入力ラインから取るようにしよう。

2002/02/07 Yutaka Kyotani

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