パチンコ台中古モニタ活用術「CR華観月」編


■CR華観月(京楽産業)
液晶パネルNEC製 5.5'TFT NL3224AC35-09
主要処理 ICTA8696F
入力信号RGB(75Ω), H/V Sync(Logic), 電源(12V)
本体改造なし
追加回路NJM2217L, NE555, 78L05ほか
お勧め度★★★☆☆
購入店・時期等NTネット 2000年6月中旬 (セル盤価格:5000円)
他の同系機種 
備考同期信号はロジックレベル H/V別供給。
自走しないため PLL内蔵同期分離回路必要。
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実験をされる前に 注意書き をお読み下さい。

■このモニタについて・・・

NEC製 5.5インチ TFT液晶パネルを使用したモニタである。
実はこの台、ホールに登場した当初かなり話題になった台で、タイトルからもそれとわかるように、 演歌歌手の田川寿美さんがモデルである。 大当たりになると、丸ごと一曲彼女の歌が楽しく聞けるという おまけもついており、カラオケモードの画面を見ながら機嫌良く口ずさむお年寄り(?)の姿を あちこちのホールで見かけることができたのは実に印象的だった・・・。
私自身の興味という意味もあり、今回も中古台を扱う業者から「セル盤」ごと購入することにした。

とりあえず、モニタ以外の部分について説明を少々・・・
まずは、右上の写真。 台の裏側から写したものだ。
主回路基板はメインCPUの載っている基板で、始動チャッカーのセンサーからの信号を処理して 大当たり判定を行うパチンコ台の中枢部分である。 電源回路やランプ、ソレノイド、その他サブ基板への I/O関係もこの基板に まとめられている。 CPUは LEテックという会社が作っているパチンコ専用 8ビットチップで、プログラムが記録されている ROMは 伝統的に 2764が使用されている。 機能的に見てもメインCPUは大したことはなさそうだ・・・

さて、主回路基板の上側と下側から中央に伸びるフラットケーブル。 この先に目的の液晶モニタユニットが取り付けられている。 ちなみに上側から伸びているのはセンサーやランプの配線で、モニタユニットのお尻に中継用の基板が取り付けられている。

モニタユニットを取り出して分解したのが右の写真。 左上が他の台でいうところの「絵柄処理基板」となるが、 この台の場合は「音声処理」も兼ねている。 部品の数も恐ろしいほど多く、基板の裏にもぎっしりと部品が装着されている。
まずは表側、CPUは川崎製鉄の KL5C80A12CFP、あとは見渡す限り ROMだらけという感じで、画像や絵柄が格納された 27C801が 2発、 音声用として 23C16000WGXが 2発、制御プログラム用 27C1001、それにオーディオアンプIC LA4280まで搭載されている。
続いて裏側、右上の写真だ。 YAMAHA製の音源チップ YMZ280B-Fと 画像コントローラー YGV608-F、ビデオアンプ用 IC LT1227×3などのほか、至る所に 10K×4素子の抵抗アレイが貼り付いている。 いやはや、パチンコ台でこれほど高密度実装の基板を 見るのも妙な話だ (^^;;

続いて主役液晶パネルの登場〜
他の台では別に「映像回路基板」がある場合がほとんどなのだが、ここで使われている NECの液晶パネルの場合、 映像回路までまとめてユニット化されているようだ。 液晶パネルの型番についても、このユニットに書いてある 型番を記しているので念のため。 左下の写真がユニットを裏から見たところだが、 きちんとアルミ製のフタまで取り付けられている。 せっかくなのでフタを外してみたのが右下。 基板が 上下に分かれているが、上側はバックライト用のインバータ、下側に映像関係の回路がまとめられている。 下側の基板には、 他のユニットでもよく見かける東芝製映像処理IC TA8696Fが装着されている。


■回路について・・・

さて、回路を調査する前にとりあえずサーチエンジンで 'NL3224'をキーワードにして検索をかけてみた。 結果、 すぐに NECのサイトにたどり着くことができ、FA用として作られた液晶パネルユニットであることや、 大体どんな仕様であるかなどはわかったのだが、肝心のピン配置や入力信号の詳細が書かれたものはどこにも 掲載されていないようだ(泣)。 それに同じ 'NL3224AC35'でも細かな仕様の違いで型番末尾の違うものがあり、 今回の '-09'は掲載されていないというおまけ付き・・・ (^^;;
結局のところ、後日別のサーチエンジンからたどって出てきた NECの英語ページから同一シリーズの PDFファイルを ゲットすることができてまずは一安心。 なぜ日本語のページに技術資料がないかというのは謎ではあるが・・・・

ということで調査の方は今回少し方針を変え、液晶パネルユニットとのインターフェース部分を中心に攻めてみた。 液晶ユニットの端子についても、入手した資料(NL3224AC35-01)のものと同一と仮定して記している。
とりあえず調べた限りでは、違いと言えば電源電圧だけという感じかな。 ちなみに '-01'は 9.5V、'-09'は 12V(実測値)となっている。

液晶ユニットにつながる信号の経路をざっと調査したのが右の図だ。
まずは R,G,B映像信号。 画像コントローラーからビデオアンプIC LT1227を使用したバッファアンプと 75Ωの抵抗を 通して出力されている。 LT1227にはゲイン調整用の VRまで取り付けられており、フルカラーのきれいな画像を 表示しようという意欲が感じられる(笑)。 これが 3回路分。
同期信号は、水平垂直を別々にロジックレベルで加える仕様なので、こちらは画像コントローラーに 直結となっている。 また、これ以外にも画像コントローラーからクロック信号が液晶ユニットに 供給されている。 外部同期モードでドットクロックを与えることで、ドット単位まできちんと同期させようとしているようだ。

この液晶ユニット、モード設定用のピンが異様に多いのは気のせいだろうか? 右上の図では紫色で示しているが、 5種類もの設定端子が存在している。 EXTCSLは外部クロックの選択用、N/Pは NTSC/PALの選択、MTSLは表示エリアを 234/240ラインから選択するための端子だ。 但し、ここで言う NTSC、PALとはあくまでも信号のタイミング上の切り替えであり、 複合映像信号がそのまま入力できるという訳ではないので念のため (^^;;
あと、面白いところでは U/DとR/L。 これを使って走査方向を上下左右好きな方向に設定ができる。 例えば 「散髪屋仕様」のテレビにしてしまうことも可能だったりする。

その他で特筆すべきことは「輝度調整」かな? 実はこの液晶、バックライトの輝度調整ができる仕様なのだが、 きちんとその回路が組んであったのは見事である。 調整用の VR自体は最初から最高輝度付近に設定されていたので、 この回路は最初から繋いでいないのと同じ意味でしかなかったのだが (^^;;
ちなみにこの輝度調整は、3.7ms周期の矩形波で「ハイレベル」になっている部分のパルス幅を可変することで 制御する仕様になっている。 ロジックICを使った CR発振回路+ VHC123によるワンショットマルチ (123の使い方がちょっと変則的??)なので、精度の方はあまり期待できないようだが、オシロで波形を 調べておいたのでご参考に。
(上:BPLSピン、下:VHC123A 1Pin、H=1ms/div、V=2V/div)


■付加回路は・・・

さて、真っ先に悩まなければいけないことは、信号の引き出しだったりする (^^;;
今回フィルムケーブルの 30ピンコネクタを探してみたのだが、不運にも在庫を置いている店がなかったため フィルムケーブルに直接リード線を半田付けするという荒技に出てしまった。 あまり耐熱性のある ケーブルではないので、作業は迅速かつ慎重に・・・
液晶ユニットの基板に信号入力用のリード線を半田付けするという方法もあるが、ざっと見た感じでは 全ての端子に半田付けできそうなポイントがあるわけではないようだ・・・

続いての問題点、同期分離回路〜っ!
調査結果や資料からもわかるように、水平垂直同期信号を別々に供給しなくてはならない。 とりあえず テストと言うことで、LM1881Nを使った同期分離回路を試してみた。 結論から先に書いてしまうと、 映像を映すことはできたのだが、ここで困った問題が発生・・・・。 チューナーのチャンネルを色々変えていると、 放送のないチャンネルに合わせたとき、液晶の走査が止まってしまうのだ (汗)
走査が止まるとどうなるか簡単に説明すると、ちょうど直前に表示していた画面が焼き付いたように表示され、 時間の経過と共に、徐々に画素が抜け落ちるように退色していくんですナ・・・。 まるでリフレッシュを止められた D-RAMが記憶内容を徐々に忘れていくような感じかな。
つまりこの液晶は、同期信号を常時供給し続けないといけない仕様のようで (^^;;

ということで、AFC付きの同期分離回路を試してみることにした。 今回使ったのは JRCの NJM2217LというICで、 VCOで構成された水平発振回路と位相比較器を使って、別に分離した水平同期信号と位相が合った発振出力が 得られるようになっている。 つまり、同期信号が供給されなくなっても、IC内部で発振した出力が 液晶ユニットに供給されることになる。 表現を変えて PLLと書いた方がしっくりくるかな?
このICは元々「オンスクリーン」などの用途に設計されたもので、これ以外にも「映像信号切り替え」 「垂直同期再生」などの回路が組み込まれている。 今回は、この中から同期関係の回路のみを使用している。

さて、組み上げてこれで完了と思ったのだが、まだダメなようだ・・・。
NJM2217Lが常時発振しているのは水平同期信号だけで、垂直同期信号は手つかずの状態だったのだが、 やはり嫌わてしまったようだ (^^;;
これ以上部品点数を増やすのも考え物なので、なるべく簡単な回路で行きたいところだ。 カウンターで 水平同期信号を分周する? ワンショットマルチを複数使って連続発振させる? 一時は TVの同期プロセスICを 持ってくるべきか・・・ と考えてみたのだが、意外にも 555の無安定モードを使った発振回路に 外部同期をかけるのがうまく行ったので、今回はこれに決定〜っ。
少し補足説明しておくと、今回外部同期用に垂直同期信号を供給しているのは「コントロール電圧」という 入力ピンで、よくパルス幅変調などの目的で発振のデューティーを変化させるのに使用されている。 回路的には 時定数回路の充電状況を監視しているコンパレーターの「反対側」のピンで、ここの電圧を下げてやれば 充電が進みきらないうちにディスチャージに移行させ、出力パルスを発生させることができる。
今回はこのピンの電位を垂直同期信号で強制的に揺さぶってやり、負の入力パルスで強制的にディスチャージに 移行させて同期をとるようにしている。

さてさて、何とかカタチになったのが右上の回路図。 前の項目でも触れたように、U/DとR/Lのピンは ジャンパーピンで設定できるようにしてみた。 表示中に変更することも可能なので、色々と遊んでみるのも 面白いかも知れない。
しかし・・・ これだけ外付け回路が増えると、なかなか実験するのに「気合い」がいりますネ・・・。

最後に一言。 今回使った NJM2217Lは「シュリンクタイプ」と呼ばれるピン間の狭い仕様のパッケージで、 ユニバーサル基板に装着する際、斜めに装着して 1本置きに足を曲げて穴に挿入する必要があったりする。 別に NJM2217Dという 2.54mmピッチのパッケージもあるようなので、状況に応じて選択をどうぞ。


■さて、映り具合は・・・

映り具合の方はこんな感じ。 高画質でなかなか良いようです〜 (^^/~。
画面は 5.5インチということで、一般的な 4インチのものに比べて一回り大きく、また 液晶のカラーフィルタも縦ストライプで「高精細仕様」という感じかな。
尚、PLAYSTATION接続時に同期信号を 75Ωで終端してみたが、 特に同期の乱れ等もなく安定に動作した。

ただ、悲しいかな・・・ ビデオモニタとして使用するためには外付け回路が多すぎます!
水平垂直同期信号個別供給までは良いとして、自走しない仕様はビデオモニタとしては いささか使いにくいのではないでしょうか??


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