■回路について(ラッキートマト編)・・・

この基板の場合も、回路は大きく分けて「絵柄処理回路」「映像・同期処理回路」「電源・その他の回路」などから構成されており、 全てが同一の基板上に作り込まれた状態となっている。
CPUは川崎製鉄の KL5C8400C、画像コントローラーは YAMAHAの YGV608-Fが使用されており、その他に絵柄用と制御プログラム用の ROM、 ワーク用 RAM、NECのゲートアレイなどが実装されている。

映像回路としては、ミツミの MM1288という ICが使用されており、映像増幅、調整、ガンマ処理、液晶パネルインターフェースなどを受け持っている。
機能的には TA8696Fと似ているが、入力が 2系統あって切り替えのできる機能や、同期分離回路が内蔵されているなど若干の追加機能が盛り込まれている。  但し、今回は 2系統の入力は並列接続されており、同期分離回路も「ただ分離するだけ」の回路のため、実は何の役にもたっていない (^^;
ミツミのサイトでデータシートを探してみたところ、MM1288CQという型番のものが入手できた。 但し今回使用のものとはパッケージのピン数が異なっており、 MM1288が44ピンに対し MM1288CQは48ピンとなっている。 ざっと内容を見た感じでは、回りに未使用ピンが増えただけのようである。
同期関係の回路はこの基板の場合も実装されておらず、画像コントローラー YGV608-Fから出力されるロジックレベルの H-SYNCと V-SYNCは、 ブランキング用として H-SYNCが MM1288に加えられる一方、液晶パネルへ直接接続されている。 したがって、 同期信号の供給がなくなると液晶パネル自身の走査も停止してしまう。
電源関係の回路としては、外部供給される 12Vからロジック用の 5Vにドロップさせるために三端子レギュレータ 7805が使用されている。  また、液晶パネルをドライブするために、SHARPの IR3M03AというICを使用したインバータ回路が 2系統搭載されており、25Vと 13Vを生成している。


映像関係の回路を抜き出したのが上の回路図だ。 「球界王」との比較の意味で映像関連の回路を全て書き出してみたが、 使用ICの違い以外にも細部で多少の違いが見られるようだ。 但し最終的には RGB映像信号を注入する部分以外は 「ブラックボックス」として扱っても問題はないように思う。

画像コントローラー YGV608-Fからの RGB映像信号は、まず 130Ωの直列抵抗を通った後 330Ωの抵抗で終端され、 映像処理IC MM1288に加えられている。  一方、同期信号 H-SYNCと V-SYNCは、ブランキング用として H-SYNCが MM1288に加えられるほか、液晶パネルにもそのまま加えられている。
その他では、液晶パネルからの極性反転(交流化)のための信号を処理する回路などが実装されている。

改造ポイントだが、まず画像コントローラー YGV608-Fから伸びている H-SYNCと V-SYNC、RGB映像信号のパターンをカットする必要がある。  今回は基板のオモテ面には手を触れる必要はなく、改造は基板のウラ面のみで完結する。  RGB映像信号は、部品番号でいうと R47〜49のウラにあるランドから中央に向かってパターンが伸びている。  これをランドのすぐそばでカットし、ランドにそれぞれリード線を半田付けしよう。 さらに、このパターンの先に直角に交差しているパターンが 2本発見できるが、これが H-SYNCと V-SYNCだ。 これらについても同様にランドのそばでパターンをカットし、 引き出し用のリード線を半田付けすれば OKだ。
外部から映像信号を供給する上での注意点は今回特になく、現状で ICとの間にコンデンサが入れてあるため、 クランプ回路等も必要なさそうだ。 信号経路に直列に入っている 130Ωと終端用の 330Ωの値を考慮し、総合的な抵抗値が 75Ω付近になるよう、終端抵抗を追加しておこう。 今回は 91Ωを選択した。
あと、複合映像信号または同期信号から連続した H-SYNCと V-SYNCを得るために PLL内蔵の同期分離回路が必要だが、 これについてはこの後の項目で説明することにする。
今回の追加回路については、上の回路図上で水色のバックで表されている。 また、パターンカットの部分には「×」印が付いているので 併せて確認して欲しい。

基板のオモテとウラのイメージ、および信号引き出しポイント周辺の拡大図を載せておいたのでご参考に。



■つづいてPLL内蔵同期分離回路について・・・

ということで、PLL内蔵同期分離回路の登場だ。 今回使ったのは JRCの NJM2217LというICで、 VCOで構成された水平発振回路と位相比較器を使って、IC内部で別に分離した水平同期信号と位相が合った発振出力が 得られるようになっている。 ここで同期信号が供給されなくなった場合、たとえば放送のないチャンネルに合わせた場合などでも、 IC内部で発振した出力が液晶ユニットに供給されるため、走査が止まることを防止できる。
さらに垂直同期信号についても、NE555を使った無安定発振回路を用意し、これに NJM2217Lで分離した垂直同期信号で 外部同期をかけるようにしている。
ちなみに PLAYSTATION接続時、同期信号を 75Ωで終端しても何ら問題は見られなかった。

尚、今回使った NJM2217Lは「シュリンクタイプ」と呼ばれるピン間の狭い仕様のパッケージで、 ユニバーサル基板に装着する際、斜めに装着して 1本置きに足を曲げて穴に挿入する必要がある。 別に NJM2217Dという 2.54mmピッチのパッケージも売られているので、状況により選択して欲しい。
下の写真は別の機種に使うために製作した同期分離回路の基板だが、12Vから 5Vにドロップさせるための三端子レギュレータを 基板上に実装している。 今回の基板は何れも内部の三端子レギュレータにより 5Vが作られているので、ここから電源をお裾分けしてもらえば 三端子レギュレータは不要となる。 前述の信号引き出しポイントには図示していないが、何れの基板の場合も 7805の出力端子からそのまま引っ張ってくれば OKだ。




■結果の方は・・・

画質はご覧の通り、一般的な画質という感じがする。  ちなみに左側が「球界王」、右側が「ラッキートマト」の制御基板を使った場合のサンプルだ。

今回は単なる改造以外にかなりの付加回路が必要となるなど、どちらかというと手間のかかる部類に入る。  特に「球界王」などは古い機種なので今後巡り会うこともないだろうと思うが、このテの一枚物基板の対応の一例として 参考にしていただければ幸いである。

これは余談だが、液晶の四隅が少し白くぼやけているのが確認できるはずだ。 実は購入直後に色々遊んでいた時には 全く問題なくキレイに映っていたのだが、保管状態が悪かったのか液晶パネル内部が劣化しているような感じに見える。  水分? それとも何か他の要因があるのだろうか・・・


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