■未決定項目について・・・
ここまででの未決定項目は次の通りとなっている。
★出力端子からの反射吸収用 R12,C6
2ページ目の説明中にも少しだけ記したのだが、この CRの直列回路は出力の配線を伸ばした場合に
「配線の反射」などが原因で異常発振が発生することを防止するためのおまじない用だ。
反射とは、配線の接続部分などでのインピーダンスマッチングが取れていない場合、
信号の一部がその部分で反射して信号を出力した側へ戻ってくる現象を指す。 場合によっては負帰還の安定性を乱し、
異常発振の原因になることがある。
今回は配線を伸ばすことがないのでなくても大丈夫とは思うが、一応念のために入れておくことにする。 値としては、
一般的に 8〜10Ω程度の抵抗と 0.1μF程度のコンデンサが使われることが多いようで、今回もそれに倣って
R12= 8.2Ω、C6= 0.1μFと決定した。
★出力トランジスタ TR3〜4のバイアス用 D1,D2とR9
出力段で使用している PNP/NPN各トランジスタの分担が切り替わるときに、ベースエミッタ間電圧の
0.6V(×2)が不感帯となって歪みが発生するのを防止するためにあらかじめバイアスを与えておくための回路で、
アイドリング電流と呼ばれる数mAの電流が TR3〜4に流れるように調整する。
トランジスタのベースエミッタ間の電圧は温度によって影響を受け易く、本来は専用に設計された温度補償用の
「バリスタダイオード」を使用するのが望ましい。
今回はとりあえず、スイッチングダイオードの 1S1588を使用し、R9をカット&トライで調整して様子を見ることにする。
■補足説明・・・
★ブートストラップ回路の効能について
さて、回路の説明のところで、ブートストラップ回路の効能について「ドライブ能力の向上と、出力段の入力インピーダンスを高める」
という説明を記させていただいた。 この件について、少しだけ補足説明をさせていただこう。
上の図は、説明用に抜き出した出力部分の回路と各部の波形イメージを表したものだが、それぞれ
C4の有無について比較用に対比している。 また前提条件として「エミッタフォロアは入力とほぼ同じものが出力される」
という原則を頭の片隅に置いておこう。
ここで C4がない場合、TR2の出力 [A] は R7,R8の直列抵抗が負荷となる。 この抵抗値が低い場合増幅率が低下することが予想され、
出力端子 [B] の先に重い負荷が接続されている場合、波形の上側のドライブでは TR3のベース電流が多く流れるため、
R7,R8で電圧降下が発生し、ここでドライブ能力が制限されてしまうことになる。 (※但し、波形の下側に関しては
TR2が頑張ればドライブ能力が制限されることはない)
次に C4を取り付けてやると、R7とR8の中間点 [C] に出力端子 [B]
と同様の信号が加えられることになる。 ここで R8に着目してみると、先ほどの前提条件から「R8両端にほぼ同じ信号が加わっている」
ということが言える。 つまり R8は両端に同じ信号が加わった結果、ロスがなければ抵抗としての動作は打ち消されてしまうことになる。
また、R7とR8の中間点 [C] は直流的に見て、出力端子よりも電源電圧に近いレベルにあるが、ここに出力端子
[B] と同じ信号をコンデンサを通して加えると「波形の頭は電源電圧よりも高くなる」ことになる。 先ほど
C4がない場合に R7とR8で電圧降下が発生してドライブ能力が制限されることを書いたが、[C] に電源電圧より高い電圧が加わることで
R7に関しては考慮する必要はなくなり、R8に関してもドライブ能力に対する制限は大幅に緩和されることになる。
2000/11/18 Yutaka Kyotani