製作編 (Page 4 / 4)

■一通り組み上がったら動作確認だ・・・

さて、基板内に取り付けた部品の確認はいかがかな? 部品の取付が終わったら、電源、スピーカー、 入力のリード線を半田付けして動作確認をしよう。 片チャンネルずつ確認する場合も同一手順で OKだが、 今一度、テストポイント「Rt」がショートされていないか念のために確認しておこう。

まずは、テスターを用意しよう。 そして、電源のリード線に電池フォルダを仮接続して電池をセットする。  スピーカーや入力のリード線にはまだ何もつながないようにしておく。 この時点で異常が発生することはまずないと思うが、 定石に従い熱くなっている部品がないか様子を見ておこう。
ちなみにこの構成の回路の場合、誤配線で出力トランジスタに大電流が流れて破壊されるというトラブルが最も多いのだが、 今回はテストポイント用に入れた Rtが電流制限の役目を果たしてくれるので安心だ。 万一 Rtが熱くなっているようなら即電池を外そう。

続いて右の図を見て欲しい。 出力部分の回路を抜き出したものだが、まずは「A」「B」間の電圧を測ってみよう。  正常動作している場合、ここの電圧は 0.2〜0.3V程度になるはずだ。 これは何を意味しているかというと、出力トランジスタ TR4〜TR5に流れる無信号時の電流(これをアイドリング電流という)を間接的に測定していることになる。  A〜B間には 100Ωの抵抗がつないであるので、ここの電圧が 0.1Vなら 1mA, 0.5Vなら 5mAという具合だ。
この回路の場合、アイドリング電流の最適値は 2〜5mA程度と思われる。 試作の際、2〜3mAになるように定数を選んであるが、 万一不幸にしてここの電圧が 0.1V未満、あるいは 1V近い場合、調整が必要と思われる。 尚、1Vを超えている場合は別の原因、 例えば誤配線があると思われるので、速やかに電池を外して再チェックだ。

ここまで OKの場合、続いて「A」「C」間の電圧を測ってみよう。 Cは出力端子のコンデンサを通る前のポイントで、 無信号時の出力トランジスタ TR4〜TR5のバランス状態を調べていることになる。 正常な場合、 ここの電圧は電源電圧の約半分になるはずだ。 万一ここの電圧が 3Vから±1V近くずれている場合、誤配線を疑ってみよう。

動作確認は以上の 2点で完了だ。 両方とも正常範囲内の方は電池を外し、そのまま「Rt」の両端に半田を盛ってつないでしまえば OKだ。

さぁ、ここまで完了した方は、続いてケースの加工に移るもよし、スピーカーなどの部品を仮接続して何か鳴らしてみるのもよし。  ぜひともバラックのままで終わらず、ケースに入れるところまできちんとやりましょうネ (^^;


■アイドリング電流の調整法・・・

今回と同じ部品を使用した場合、アイドリング電流が極端な値になることはまず無いと思われるが、出力トランジスタを別のものに代替した場合、 メーカーや製法によって VBE-IBの特性が違うため、バイアスの設定を変えてやる必要が出てくる。
ここでの対応だが、標準より多いのか少ないのかで対応が違ってくる。 まず、20KΩ程度の半固定抵抗を用意しよう。
標準より電流が多い場合は出力トランジスタの VBEを下げる必要があるので R9に並列に、少ない場合は逆に VBEを上げる必要があるので R10に並列接続する。 何れの場合も最初は抵抗が最大の状態にセットして電池を入れ、 「A」「B」間の電圧を測定しながら徐々に抵抗が少なくなるように調整する。 これでアイドリング電流が 2〜3mA、即ち 0.2〜0.3Vになるように調整すれば OKだ。
調整後はそのままでも良いのだが、半固定抵抗を取り外してその時点の抵抗値を測定し、 近い値の固定抵抗に置き換えるのがベストという感じかな。

これは余談だが、設計当初は TR3を使用せず、ここに普通のダイオードを使った回路で計画していた。  しかし、実際に実験してみると、電源電圧が変動した場合にアイドリング電流が不安定で、 急遽ここをトランジスタで構成した現在の回路に差し替えることにした経緯がある。
昔はこのテの用途専用に使用する、温度補償用の「パリスタダイオード」なるものも売られていたのだが、 最近では特殊な部品となりつつあるようだ。 一般のスイッチングダイオードでうまく特性が合わないということは、 トランジスタを使った回路にする(安価な機器で採用された例を余り見た記憶はないが・・・)方が、安くて確実なようだ。


■2SA952と 2SC2001のペアが入手できない場合は・・・

さて、2SA1015や 2SC1815の場合は全国どこでも手に入りそうなので問題ないと思うが、2SA952と 2SC2001は売っている店が少ないようだ。 ちなみに、このアンプの製作を計画してトランジスタを選定していた 2000/09当時、 大阪日本橋のニノミヤパーツでは 2SA952を置いていなかった。 その際 2SA953と 2SC2002のペアを買い求めて実験し、 後日シリコンハウス共立で 2SA952と 2SC2001を購入して差し替えてみたが、とりあえずはアイドリング電流の調整も必要なく、 全く同様に使用できている。
規格の上からは、2SA952/2SC2001は VCBO=30V, IC=0.7Aに対し、2SA953/2SC2002は VCBO=60V, IC=0.3Aとなっている。  2SA952/2SC2001の方が「低圧・大電流型」という感じだが、今回の用途ではどちらでも OKだ。
代替品種を探す場合、IC=0.3A以上というのを検討項目にして欲しい。 但しメーカーが違う場合、 大抵アイドリング電流は再調整が必要と思われるので、その辺りはどうぞよろしゅうに (^^;

究極の選択 2SA1015と 2SC1815を出力段に使う というのも一応やってみました。  建前として、2SA1015/2SC1815は IC=0.15Aなので、フルパワー時は完全に規格オーバー となります。  したがって、これは推奨するものではない ことをあらかじめご理解下さい。 例によって、結果の保証もありません (^^;
アイドリング電流は、この定数では少な目になるため R9を 560Ω→680Ωに変更してやればとりあえず OK、 実際に使ってみた感触では、大電流領域での特性が悪いためか 2SA952/2SC2001よりも最大出力がやや小さめになるようだ・・・  というのをご報告しておきましょう。 規格内で使いたい場合、スピーカーを 8Ωではなく、16Ωのものにするという対応もアリですが、出力さらに下がりますぅ(苦笑)  とりあえず、ご参考程度に (^^;;

※用語解説※
VCBOコレクタ・ベース間最大電圧(エミッタ解放)
IC最大コレクタ電流
VBE-IB特性 ベース・エミッタ間電圧に対するベース電流の変化度合い


2000/10/05 Yutaka Kyotani
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