パチンコ台中古モニタ活用術「バクチョウ」編


■バクチョウ(ARUZE)
液晶パネル東芝製 7.77'TFT LTM07C383
主要処理 IC不明
入力信号DigitalRGB(6Bit),Enab,Clk(Logic),電源(3.3/12V)
本体改造なし
追加回路A/Dコンバータおよびタイミング信号生成回路一式
お勧め度?????
購入店・時期等midikidさんご提供
他の同系機種 
備考映像信号は Digital RGB(各6Bit)、同期信号は表示エリア識別を兼ねた混合同期(何れもロジックレベル)。 さらに水平 1ドット単位のクロック信号が必要。
信号タイミングは NTSC準拠と思われるが、ビデオモニタとしての応用は A/Dコンバータおよびタイミング信号生成回路一式が必要。
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実験をされる前に 注意書き をお読み下さい。

■はじめに・・・

今回はパチンコではなく、パチスロの「バクチョウ」を取り上げてみたいと思う。
私はホールで遊ぶのはもっぱらパチンコ派で、パチスロにはこれまでほとんどと言っていいほど手を出していなかった。 最近はパチスロにも高精細の液晶画面が付くようになり、様々な視覚効果を訴えようとしているのを見かけるのだが、 いかんせん自分で遊んだことがない上、中古台の値段も全体的に高いようで少々手を出しにくく感じていたのは事実である。
ちなみに今回の「バクチョウ」、機種名を漢字で表現すると「爆釣」と書くらしい。 内容の方はもちろん釣りをモチーフにしたものだ。

さて、掲示板の方でも過去この機種に使われている液晶についての話題が登場したことがあるのだが、残念ながら その当時情報が全くなく、私自身も上記のような事情で現物を見たことがなかったため、明るい内容のResができなかったのは非常に残念に感じていた次第だ。
今回このレポート作成にあたり、midikidさんという方より液晶とサブCPU基板(パチンコ台の絵柄処理基板に相当)のご提供をいただきました。 この場を借りてお礼申し上げます m(_O_)m


■このモニタユニットについて・・・

▼ 液晶パネル裏蓋
サブCPU基板 ▼
▲ 液晶パネル内部
フィルムケーブル ▲
東芝製7.77インチワイドTFT液晶が使われており、パチンコ台でいうところの絵柄処理基板に相当する「サブCPU基板」から、 専用のフィルムケーブルを通して接続されている。 液晶パネルはマウント用の金具と、各種 I/Oへのケーブルを中継する 中継基板が一緒に取り付けられた状態となっているが、中継基板と液晶は癒着しておらず、液晶単体で使われているというイメージだ。

続いてサブCPU基板。 透明なアクリル製ケースに L字型の少々大きめの基板が収められており、基板の一角を巨大な画像コントローラーらしき LSIと大容量のROMが占拠している。 またサウンド関連の回路やその他の I/O関連回路までが同じ基板に収められているため、 放熱器の付けられたオーディオアンプや電源用ICなど、そこそこ大きな部品が取り付けられている。

主要部品の方だが、CPUは東芝製 TMP68HC000F-16、制御プログラム用ROM 27C160、ワーク用 128K×8Bit S-RAM TC551001CSTが2発。 画像コントローラーは SETA製ST-0032(304Pin)、画像用かどうかは定かではないが ST-0042(208Pin)、ST-0048(80Pin)が裏側至近距離に装着されている。 それに、画像データ用ROM 27C322が4発、ワーク用と思われる 64K×16Bit S-RAM TC551664BFT、1M×16 EDO-DRAM IS41C16100Sが3発接続されており、 サウンド用として ROLAND製 RPP-8、データ用ROM 27C322が1発使われている。
その他では、オーディオアンプIC AN7195K、電源用IC HRD051R5と7805、2933、電源制御用と思われるFET 2SJ245×3発などが主なところか。 考えてみれば、かなり豪華なスペックだ (^^)

ご本尊の液晶パネルをマウント用金具から取り外し、裏蓋を開けたのが右上左側の写真だ。 下側半分が映像関係、上がバックライト用インバータと 基板は完全に分離されている。 映像処理用の基板は少々大きめだが、部品の軽薄短小化が進んでいるせいかあまり窮屈さを感じない作りである。
実はバックライトインバータには黒いカバーが被せられていたのだが、中を見るために剥がそうとして勢い余って 「バリッ」とやってしまった (^^; ま、とりあえずそのままでも問題なさそうなので、外したままである。


■追加回路について検討する・・・

さて、この液晶を最初に見たとき、付属のフィルムケーブルが何となく妙な感触だったので少し回路を追ってみたのだが、 サブCPU基板内に、定番の映像回路らしきものが全く見当たらないのだ。 液晶用コネクタ裏から伸びる10数本のパターンが、 テストポイントを経て 2個の74VHC273へとつながっている。 この時点でほぼ間違いなく DigitalRGBかつ3.3V電源確定 である (^^;

以前に「CRかましの金ちゃん」というパチンコ台に使われている DigitalRGBの液晶を扱ったことがあるが、今回も 追加回路が大きくなることを覚悟しなければならないようだ。 尚、この液晶、解像度は通常の TVと同じ水平走査周波数 15KHz系と思われる。 従って、ビデオモニタとして応用するためにスキャンコンバータを必要としたりすることはないのだが、 結局のところ A/Dコンバータとタイミング信号生成回路は必要 だ (^^;

サブCPU基板と液晶を動作状態にして信号波形を測定したところ、次のような信号が観測された。

  1.ドットクロック 9.5394MHz
2.同期信号 約16.5mS / 63μS HV混合
3.RGB映像 各色5Bit
4.3.3V電源

この液晶の型番 LTM07C383ズバリのデータシートは残念ながら見つけることはできなかったのだが、他の 東芝製 DigitalRGB液晶のデータシート を見ると、ほとんど同様 のインターフェースであることが判る。 他機種の表記例に倣って書き換えると、1はNCLK、2はENAB となる。 また RGB映像は各色5Bitが出力されているが、 フィルムケーブルの配線や液晶内部の状況を確認すると、6Bit入力の最下位がサブCPU基板側で GNDに固定されているだけのようだ。


■とにかく実験開始・・・

先ほど「スキャンコンバータを必要としない」旨の記述をしたが、A/Dコンバータやタイミング信号生成回路を一から作成することを考えると、 既存のスキャンコンバータから信号を引き出してインターフェース部分を追加作成するのが実験への早道だと思う。

ということで、以前に製作したスキャンコンバータに登場願うこととし、インターフェースに必要な回路のみを 追加作成して実験を開始することにした。 ちなみに「CRかましの金ちゃん」のレポートで使ったのと同一のものだ。
ご存知でない方のために少しだけ補足しておくと、今回実験に使ったスキャンコンバータは、トランジスタ技術SPECIAL No5に掲載されていたものを自分なりにアレンジしたもので、 製作当時(1995〜96にかけて)すでに主要部品の世代交代が行われていたことや、入力をアナログ RGBだけにしたこと Etc.で、 かなり原型とは異なる回路になってしまっている。 付け加えるなら、一応動作はするが現在もケースなしで未完成のままだ (^^;;
主要部品は、A/Dコンバータに富士通の MB40568-SK、ラインメモリは NECのμPD42101C、D/Aコンバータは富士通の MB40778Hを 使用。 信号は 14.31818MHzのクロックで A/D変換の後ラインメモリに書き込まれ、28.63636MHzで同じ走査線を 2回読み出して D/A変換、パソコン用の CRTに送られる。 ちなみにこのクロックは、各水平同期周波数の 910倍に相当し、 すなわち 1本の走査線が 水平方向に 910分割されていることになる。
今回この分周回路を一時的に変更して608分割に設定、約9.56MHzのドットクロックが得られるようにする。

さて、上記のスキャンコンバータからの信号引き出しはこんな感じになる。

  1.A/Dコンバータからラインメモリへ至る信号のうち、RGB各上位 6ビットを分岐して抜き出す。
2.A/Dコンバータの変換クロックおよび、垂直同期、ラインメモリ書き込みリセット信号を得る。
3.タイミング信号生成回路の分周比を 910分割 → 608分割に変更する。
4.ENAB信号生成用タイミング回路を設ける。
5.3.3Vレギュレータ、データラッチおよびクロックバッファを設ける。


とりあえず今回はあくまでも実験と割り切って、追加回路も 急ごしらえの暫定版 としている。 一応追加部分の 回路図を載せておくが、このまま製作しても実用にはほど遠いレベル のものであることをご了承いただきたい。 実用レベルのものにするには、入力信号が途切れた場合にも正常な NCLK、ENAB信号を供給し続ける ようにすることと、 ワンショットマルチによるものではなく、NCLKをカウントして生成された きちんとした表示エリア定義信号を ENABとして供給する ことが必要だ。

追加部分の回路について簡単に補足しておくと、電源は 5Vと3.3Vの二系統使用しているので、供給されている部分に注意して欲しい。 今回は 3.3Vを三端子レギュレータTA48033で作っているが、小さなものでも良いので放熱器が必要だ。 また、出力ラッチおよびクロックドライバは 74VHCシリーズのICを電源電圧 3.3Vで使っている。 これはロジックレベルを 5V系→3.3V系に変換する際の常套手段で、 入力部分の保護回路の関係で 74HCや74ACシリーズのICで代用することは不可能だ。
尚、液晶のクロックは東芝の場合伝統的に立ち下がりエッジを使うようである。 この回路では実は逆論理なのだが、 遅延時間の関係か、ゲートを一段にすると「ウソ」のデータをつかみがちだ。 それと、ワンショットマルチによる ENAB信号は安定性が悪いので、間違ってもこのまま作らないように (^^;;


最後に、液晶パネルに各信号を供給する端子部および、実験中のイメージをご覧いただこう。
液晶パネルの信号コネクタは今回 0.8mmピッチのものが使われているのだが、フィルムケーブルの先には 2.0mmピッチのコネクタが装着されているので、まずは一安心。 また、12Vを必要とするのはバックライトのみなので、 液晶裏側に顔を出しているインバータ基板上のコネクタ(左上イメージ参照)に直接供給すれば OKだ。


■さて、映り具合は・・・

上記の追加回路を組み込んで ENAB信号生成回路のタイミングを調整すると(現状ではかなりクリティカルだが)、右のイメージのような画面が得られる。 PLAYSTATIONに接続してテスト中だが、 とりあえずは「文句なし」のレベルでしょう〜 (^^/~。
今回は 7.77インチ液晶ということで、映り具合と画面の大きさに関しては最高に近いレベルなのだが、追加回路の大きさを考えると、 ビデオモニタとして応用するのは少々ハードルが高いように感じる。 先ほども触れたが、実用レベルのものにするにはまだまだ改良が必要だ。

ビデオモニタとしてではなく、マイコン応用システムなどの組込用として使用するのであれば、今回追加回路で作っている信号は CRTコントローラーから引き出せる筈なので、用途によってはあまり気にする必要はないと思われる。
今回お勧め度の表示は控えさせていただいたが、画質はとても良好なのでそのあたりは状況によってご判断いただきたい。

とりあえず、追って専用の A/Dコンバータおよびタイミング信号生成回路の作成を行うことを予告して、今回のレポートを ひとまず終わりたいと思う。

2003/01/13 Yutaka Kyotani
2003/05/04 液晶モニタシステム製作例へのリンク追加

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