パチンコ台中古モニタ活用術「CRかましの金ちゃん」編


■CRかましの金ちゃん(タイヨーエレック)
液晶パネルNEC製 10.4'TFT NL6448AC33-18K
主要処理 IC不明
入力信号Digital RGB(6Bit),H/V Sync,Clk(Logic),電源(5/12V)
本体改造なし
追加回路スキャンコンバータ 一式
お勧め度?????
購入店・時期等NTネット 2000年6月中旬 (セル盤価格:15000円)
他の同系機種CR海底天国
備考映像信号は Digital RGB(各6Bit)、同期信号は H/V別供給(何れもロジックレベル)。 さらに水平 1ドット単位のクロック信号が必要。
信号タイミングは VGA準拠なので、ビデオモニタとしての応用はスキャンコンバータが必要。
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実験をされる前に 注意書き をお読み下さい。

■このモニタについて・・・

この台を見た第一印象、表示部を含めた中央のヤクモノが実にデカイ!
NEC製 10.4インチ VGAモードの TFT液晶パネルをモニタ表示部に使用しており、盤面の横幅半分以上が 表示部を含めたヤクモノのためのスペースに割かれた状態だ。 そのため、盤面に打たれている釘の数は、 他の台に比べてかなり少ないように感じられる。
同社の 10.4インチ液晶搭載機種で最初に発売された台は「CR海底天国」という名前で、業界初の大画面液晶搭載という話題性から かなりの大ヒットになったと記憶している。 その後「CRおかっ引き銭形くん」「CRかましの金ちゃん」とシリーズで発売され、 この台が都合三作目ということになるが、はっきり言って、ホールではあまりヒットしませんでした (^^;;

さて、今回も私自身の興味という意味もあり、中古台を扱う業者から「セル盤」ごと購入することにした。 ちなみにこの機種の選択理由は、同シリーズのなかでいちばん台の程度が良さそうだ・・・ という単純な理由だったりする。
余談だが、初代「CR海底天国」は製造されてからかなりの年月が経過している上、ホールでの人気も高かったため、酷使されている可能性が最も高いようだ。  もし液晶の転用が目的で中古台を買われる場合は、ハズレを引かないよう十分に下調べをしよう。

とりあえず、モニタ以外の部分について説明を少々・・・
と行きたいところだが、セル盤のウラには表示部と入賞口位しか付いていなかったりする。 他の台では、メインの回路基板が盤面のウラに 取り付けられている場合がほとんどだが、何故かこの台では別になっている。 しかもデカイ(笑)。  実際のところ、セル盤のみしか購入しなかったので、どんな形でこの基板が台に取り付けられていたかは謎だ。
話を元に戻そう。 CPUは例によって ROM内蔵パチンコ専用チップで、その周囲を大量(何と8個も)の 8Bitラッチ 74HC273が取り囲んでいる。  その他では、サウンドジェネレーター SN76489、音声合成IC MSM63P74などが実装されている。
画面が凝っているのに比べて、サウンドの方はずいぶん控えめな構成ですネ (^^;

続いてモニタユニットを取り出して分解したのが下の写真だ。 液晶パネル自体が大きいため、 その他の部品も含めたユニットのサイズもかなり大きくなっている。
いちばん左がユニットを後ろから見たところ。 基板が二枚装着されているが、左側の大きなのが絵柄処理基板、 右側の小さな基板はバックライト用のインバータだ。
まずは絵柄処理基板だが、CPUは意外にも ZilogのZ80、それに MPAD501と書かれた画像コントローラーらしき巨大な LSIがど真ん中に鎮座している。 ROMの方は、制御プログラム用として 27C1001、絵柄用として SHARP製42PinマスクROM(容量不明)が 2個、 RAMは表示用として 62256が2個と、OKIのEDO-DRAM MSM5118165D、それに制御プログラムのワーク用と思われる TC55257が装着されている。
その他では、74HCと74ACシリーズの ICが何個か装着されている程度だ。

あと、画面を間近で見ていて感じたのだが「VGAにしては画素が粗い」という印象を受けた。  細部まできちんと調べた訳ではないので現時点では何とも言えないが、ひょっとして画像データの実解像度は 320×240で作ってあって、 それを引き延ばして 640×480で表示しているのだろうか?

さて、いよいよ主役液晶パネルの登場〜
真ん中の写真が液晶パネルを後ろ側から写したところだ。
バックライトと信号用のコネクタ、それにスイッチ類が何個かあるだけで、裏側からは 大した部品は確認できなかった。 最も、信号コネクタの周りには米粒のようなチップ部品がそこそこ 装着されているので、奥の方にはきっと色んな意味で凄い部品が隠されているんだろうなぁ・・・ と (^^;;

最後に右側の写真、液晶パネルの銘板部分を写してみた。 製造年月日は 99/04/23となっているのが読み取れる。
これは余談だが「CR海底天国」の液晶は NL6448AC33-18で、末尾の「K」が無いという情報が得られている。  とりあえず互換性の方は問題なさそうだが、細部の違いについては定かではない。


■続いては実験前の下調べ・・・

さて、いつもならここで絵柄処理基板から映像回路基板にかけての接続から調査するところだが、既に NECの英語サイトから資料(NL6448AC33-18のもの)を得ることができてしまっている上、アナログ回路らしいところが基板上に全くないので、 液晶パネルの信号線関係と、バックライトの電源コネクタ付近を軽く調べる程度でやめておいた。
しかし・・・ なぜ日本語のページに技術資料がないのかというのは、永遠の謎ですな (^^;;

ということで、ここからは実験と応用を前提とした話に移りたいと思う。 何分今回はネタがネタだけに、 中途半端な気持ちで取り組むことはやめておいた方が良いだろう。

この液晶パネルの応用法として考えられる用途としてはこんな所だろうか?

1.組込み用カードPC、ワンボードPCなどのモニタとして活用する。
2.通常のデスクトップパソコンのモニタとして活用する。
3.スキャンコンバータを通してゲーム機やテレビチューナーを接続する。

1は最も簡単だ。 主要な組込み用カードPC、ワンボードPCなどの対応機種に入っているようなので、 ケーブルさえ工夫すれば接続は問題なくできるだろう。 追加回路もほとんどいらないはずだ。

続いて2だが、一見簡単そうに見えて実は問題が多い。 一般的なパソコンの映像出力から Digital RGBの液晶パネルに接続するためには、ドットクロック再生回路と高速 A/Dコンバータ(25MHz対応)が必要になってくるので、 スキャンコンバータを自作するのと手間はそんなに違わない。  安価なパソコン用 XGA対応液晶モニタが数万円で買えてしまう時代なので、これはちょっと割に合わんでしょう (^^;;

最後に3。 最初からマジメにやると大変です(苦笑)。 しかし、実はコレが今回の最終目的だ・・・
私の場合、手元に作りかけて完成一歩手前の状態で放置してあったスキャンコンバータがあったので、 とりあえずこれを使って実験し、最終的にどうするか考えることにした。 良い子はマネしないように (^^;;


■さ、いよいよ実験開始・・・

さて、まずは下の写真を見て欲しい。
左側はバックライト用のインバーター、右側は絵柄処理基板と液晶パネルを結んでいる信号用のケーブルだ。  何れも特殊なハーフピッチコネクタが使われており、手に入りにくい上使い勝手も悪そうなので、 手始めにこいつらを一般的なコネクタに交換してしまおう。

まずはインバーターの電源ケーブルだが、こちらはピン数も少ないこともあり、 EIコネクタ(5Pin) を使用した。 1〜2は 12Vの電源へ、3〜4はグラウンド、5は 4.7KΩの抵抗で 5Vの電源に吊っておくか、面倒ならオープンのままで OKだ。
※当初は抵抗で 12Vの電源に吊すのが正解と思っていたが、5Vが正解でした(汗)。 ま、弊害はないようなので・・・
信号用ケーブルは、千鳥配列になった 31Pinのものが使われており、これが何故か絵柄処理基板上では 30Pinの信号用と 3Pinの電源用に分割されている。 NECの資料によると Pin30と31は未使用とのことなので、 とりあえずここでは一般的な MILコネクタ の 30Pinのものを使用することにし、 今後絵柄処理基板をテストに使うことも考慮して、下段中央の写真のように中継コネクタとしてまとめてみた。  ちなみに液晶側はメス(通常フラットケーブルを圧着する方の側)の基板取付け用を使い、 ユニバーサル基板の切れ端を使って抜き差しと配線の便を図っている。
液晶側の配線はそのままそっくり MILコネクタに結線し、最後に Pin31のリード線をPin30にまとめておけば OKだ。  絵柄処理基板側は少し変則的なので注意しよう。


■スキャンコンバータとの接続・・・

スキャンコンバータ内部でどのような機能があり、信号がどう処理されているかの説明については、 長くなるので今回申し訳ないが割愛させていただきたいと思う。 興味のある方は、最近では トランジスタ技術 2000年12月号 に関連記事の特集が組まれているので、参考にして欲しい。

今回私が製作したものは、トランジスタ技術SPECIAL No5に掲載されていたスキャンコンバータを自分なりにアレンジしたもので、 製作当時(1995〜96にかけて)すでに主要部品の世代交代が行われていたことや、入力をアナログ RGBだけにしたこと Etc.で、 かなり原型とは異なる回路になってしまっている。 付け加えるなら、現在も動作はするがケースなしで未完成のままだったりして (^^;;
主要部品は、A/Dコンバータに富士通の MB40568-SK、ラインメモリは NECのμPD42101C、D/Aコンバータは富士通の MB40778Hを使用。 信号は 14.31818MHzのクロックで A/D変換の後ラインメモリに書き込まれ、28.63636MHzで同じ走査線を 2回読み出して D/A変換、パソコン用の CRTに送られる。 ちなみにこのクロックは、各水平同期周波数の 910倍に相当し、 すなわち 1本の走査線が水平方向に 910分割されていることになる。

さて、上記のスキャンコンバータからの信号引き出しはこんな感じになる。

1.ラインメモリから D/Aコンバータへ至る信号のうち、RGB各上位 6ビットを分岐して抜き出す。
2.ラインメモリの読み出しクロック(28.63636MHz)および、水平垂直同期信号を得る。
3.データラッチおよびクロックのバッファを設けて、液晶パネルに信号をインターフェースする。
4.タイミング信号生成回路の分周比を 910分割 → 800分割に変更する。

ちなみに上記4は液晶パネルの仕様によるものだが、私が実験した限りでは 910分割のままでも何とか使用できるようだ (NECが保証している訳ではない)。 この下に実験風景および、800分割時(下段左)、910分割時(下段中央) の画面写真を載せておくので、最終的なご判断についてはご自身で行っていただきたい。


一応追加で作ったデータラッチと、クロック用バッファ部分の回路図を書いてみたけど、 あまり役にたたなかったりしてね・・ (^^;;

あと、トランジスタ技術 SPECIALの回路を参考にした方のために、タイミング信号発生回路の分周比を 800分割に変更する方法について少しだけ触れて、この項目は終わりにしたいと思う。
手元に回路図(上記の P102)があるという前提で申し訳ないが、74LS163×3と、それにつながっている LS10、LS32に注目して欲しい。 74LS163×3からなる回路は合計12Bitの同期カウンタを構成しており、 カウント中に二進数で 0001 1100 0111 即ち 455を検出すると、その次のクロックで強制的に 1をロードするようになっている。 これで 455進カウンタという訳だ。 ここでこの検出値を 0001 1001 0000 即ち 400に変更してやることができれば分周比の変更が可能だ。
具体的には、中央の LS163につながっている LS10の入力を、QC → QAに移動し、LS163の L端子を LS32の出力から先ほど変更した LS10の出力へつなぎ変えれば OK。 変更はこの二ヶ所だけで、 追加部品も不要だ。


■さて、映り具合は・・・

分周回路を 800分割に組み替えた際の映り具合はこんな感じ。 PLAYSTATIONに接続してテスト中だが、 とりあえずは「文句なし」のレベルかな〜 (^^/~。
画面は 10.4インチということで、一般的な 4インチのものに比べて面積比で 4倍以上、また 液晶のカラーフィルタも当然ながら縦ストライプで、ゲーム機やテレビの表示装置としては最高のレベルではないだろうか。

ただ、悲しいかな・・・ ビデオモニタとして使用するためには外付け回路が多すぎます!
今回のレポートは、以前に自作したスキャンコンバータから信号を取り出して接続テストを行ったが、 入力信号がなくなった場合に同期信号等のタイミング決定用の信号が途切れてしまうことに関する対策は行っていない。  従って、実用レベルのものにするには、まだ多少手を入れる必要がある ことはご理解いただきたい。

最近では一万円以下で安価なスキャンコンバータが売られており、これらを改造して使うことができれば もっとハードルを下げることがでそうだ・・・ というのは正直感じていたりする。
実は私も某H社のを購入して少しだけ調べてみた。 しかし手持ちの CRTと TVに接続して映してみたところ、何が原因なのか画質はメチャクチャ悪く、 回路的なものやその他を判断して、現時点では 「使いもんにならん!」 という結論に達している・・ (^^;;
大体 ICの表面を削って型番を判読不能にする のは反則でっせ!!

ということで、今回はこの液晶パネル専用のスキャンコンバータをとりあえず作ることにしてみた。
尚、2001/08現在、現行モデルではないが電波新聞社 XRGB-1を改造してこの液晶に接続できることが判明しているので、 興味のある方はそちらの記事もご参照いただきたい。
市販のスキャンコンバータの改造法模索については色々調査してみたが、一万円以下で買える安価なものについては 回路的なものを考えるとほぼ絶望的な感触だ。 この液晶を接続するためには、内部が純粋な RGB信号で処理されているものでないと 対応できないのだが、安価なスキャンコンバータにそれを望むのは無理なのかもしれない・・・

参考文献
トランジスタ技術 2000年12月号 P240〜 「スキャン・コンバータの設計」
トランジスタ技術 SPECIAL No.5 P97〜 「倍速スキャン・コンバータの設計・製作」
※上記何れも CQ出版社

2001/08/25 XRGB-1改造で作る液晶モニタ レポート追加
2001/04/02 専用スキャンコンバータ レポート追加
2001/01/10 Yutaka Kyotani

専用スキャンコンバータの製作
XRGB-1改造で作る液晶モニタ
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